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いろんな人がいて、いろんな本を読んでいる。コーヒーと夜の散歩と伊藤計劃がだいすきな25才が、 あんな本や、こんな本を、紹介します。

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25歳のオールタイムベスト本 《30》

今週のお題「読書の秋」 (ちょうどいいかなとおもってお題もくっつけてみました。秋は読書ですね。冬も夏も、昼も夜も、いますぐじゃなくていい、十年二十年かけて、本をどうぞ) 25歳、四半世紀を生きてきました。 これからも、たくさんの本に出会えるのか…

ひとがほんとうはいるということ 「お家賃ですけど/能町みね子」

牛込の加寿子(かずこ)荘を加寿子荘と呼んでいるのは私だけで、それもこっそり呼んでいるだけのこと、加寿子荘には本名がない。不動産屋で紹介を受けたときには、「坂井荘」と聞いていた。でも、実際に来てみると建物のどこにも「坂井荘」とは書いていない…

勝ったとか負けたとかうるさいなあってさ 「世界は終わらない/益田ミリ」

書店員の土田新二・32歳は、後輩から「出世したところで給料、変わんないッスよ」と突っ込まれながらも、今日もコツコツ働く。どうやったら絵本コーナーが充実するかな? 無人島に持って行く一冊って? IKの自宅と現場を満員電車で行き来しながら、仕事、…

これがいのち 「卒業式まで死にません-女子高生南条あやの日記-/南条あや」

終止符/私はいつでも追いかけられている この世の中の喧騒(けんそう)とか 義務なんてチンケなものじゃなくて 自分自身に 誰も助けてくれない 助けられない 私の現在は錯乱している きっと未来も ならば 終止符をうとう 解放という名の終止符を 多弁で、個…

死んでもいいなんて言っていないし言うつもりもない 「春を背負って/笹本稜平」

先端技術者としての仕事に挫折した長嶺亨は、山小屋を営む父の訃報に接し、脱サラをして後を継ぐことを決意する。そんな亨の小屋を訪れるのは、ホームレスのゴロさん、自殺願望のOL、妻を亡くした老クライマー……。美しい自然に囲まれたその小屋には、悩める…

だれかがその波に乗っているのです 「大きな音が聞こえるか/坂木司」

「どうしてもやめられない。誰に何を言われても今、これがしたい。そんな欲求って、否定できないものよ」 サーフィンが好きな高校一年生の泳(えい)は、ある日、“終らない波”ポロロッカの存在を知ります。 「この波に乗ってみたい――」それにはまずは資金集…

モラトリアムをさがすモラトリアムに出掛けましょう 「夏美のホタル/森沢明夫」

写真家志望の大学生・相羽慎吾。卒業制作間近、彼女の夏美と出かけた山里で、古びたよろず屋「たけ屋」を見付ける。そこでひっそりと暮らす母子・ヤスばあちゃんと地蔵さんに、温かく迎え入れられた慎吾たちは、夏休みを「たけ屋」の離れで暮らすことに。夏…

わたしたちはだれを殺していますか 「青の炎/貴志祐介」

本当に、そうなのか。自分で思ったことに、疑問を呈したくなる。完全犯罪というのは、事実、そんなも稀(まれ)なことなのだろうか。 別れた父が現れ、酒浸り、母と娘を脅かします。 17歳の主人公は、警察や法律を頼るのですが、だれも家庭には踏み込めない…

言語ゲームははじまっています 「屍者の帝国/伊藤計劃・円城塔」

一、生者と区別のつかない屍者の製造はこれを禁じる。 二、生者の能力を超えた屍者の製造はこれを禁じる。 三、生者への霊素の書き込みはこれを禁じる。 屍者の利用が普及する19世紀末、舞台は大英帝国からはじまり、全世界へ。 機密を持ち出したカラマーゾ…

あなたはなぜ生きていますか 「K2に憑かれた男たち」

昔々、あるところに、登山家というへんな人種があったとさ。 夏になると、テントしょって、わざわざさみしい山へ入って、喜んだ。 冬になると、テントしょって、急にヤカンにアイゼン巻きつけ、山の中。 日本中の、山に登り、それでも足りずにヒマラヤまでも…

倫理の教科書はまだありません 「ぼくのメジャースプーン/辻村深月」

ぼくらを襲った事件はテレビのニュースよりもずっとどうしようもなくひどかった――。ある日、学校で起きた陰惨な事件。ぼくの幼なじみ、ふみちゃんはショックのあまり心を閉ざし、言葉を失った。彼女のため、犯人に対してぼくだけにできることがある。チャン…

あなたへ 「ラストレター/木藤亜也」

お庭にあったげんのしょうこが、根こそぎ、引きちぎられてしまいました。じだんだ踏んで悔しいやら悲しいやらで、わめいていたところ、小さな苗をきのうみつけたのです。そのときの喜びといったら……何ていっていいかわかりません。 げんのしょうこは陰干しに…

いたたたたい 「UNTITLED/飛鳥井千砂」

食材は火曜日から仕事帰りに少しずつ買い足して、今朝はいつもより早く起き、お弁当を作りながら、ついでにできる限りの下拵えをしておいた。そして定時きっちりで仕事を終らせ、走って家に帰ってきた。 31歳、実家暮らし。生真面目で、自分にも他人にも厳し…

いいえ、静かではありません 「喜嶋先生の静かな世界/森博嗣」

文字を読むことが不得意で、勉強が大嫌いだった僕。大学4年のときの卒論のために配属された喜嶋研究室での出会いが、僕のその後の人生を大きく変えていく。寝食を忘れるほど没頭した研究、初めての恋 「いまひとつわからない」ことばかりのなかで、ひとつひ…

すらばしくないってことは、ぜんぜんだめってことですか 「生きるぼくら/原田マハ」

いじめから、ひきこもりとなった二十四歳の麻生人生(あそうじんせい)。頼りだった母が突然いなくなった。残されていたのは、年賀状の束。その中に一枚だけ記憶にある名前があった。「もう一度会えますように。私の命が、あるうちに」 たったひとりの肉親を…

純粋でもいいのです 「トリツカレ男/いしいしんじ」

ジュゼッペはみんなから「トリツカレ男」ってあだなで呼ばれている。 一度なにかにとりつかれちゃうと、もう、ほかのことにはいっさい気がむかなくって、またそのとりつかれかたが、そう、ちょっと普通じゃないんだな。 たとえばおととし、あるきもちのいい…

見えるものしかわたしたちには見えないのです 「ベンハムの独楽/小島達矢」

しばらくして、私は《まばたき》によって、二人の体を行き来しているのだとわかった。早紀の身体にいるときに《まばたき》をすると、次の瞬間で真紀になり、同様に真紀の場合は、一瞬にして早紀になるのだ。 未来が見える男、ヒトデに魅せられた二人、ポケッ…

せんせい、ねえ、せんせい 「きみはいい子/中脇初枝」

17時まで帰ってくるなと言われ校庭で待つ児童と彼を見つめる新任教師の物語をはじめ、娘に手を上げてしまう母親とママ友など、同じ町、同じ雨の日の午後を描く五篇からなる連作短編集。 ある日とつぜん、名前が付く。だけど、こころは、それまでと同じなの…

あした、いいえ、こんばんのわがみ 「床下仙人/原宏一」

「家の中に変な男が棲(す)んでいるのよ!」念願のマイホームに入居して早々、妻が訴えた。そんなバカな。仕事、仕事でほとんど家にいないおれにあてつけるとは! そんなある夜、洗面所で歯を磨いている男を見た。さらに、妻と子がその男と談笑している一家…

ブイヨンって呼んでもいいし、コンソメって呼んでもいいですよ 「スープ屋しずくの謎解き朝ごはん/友井羊」

店主の手作りスープが自慢のスープ屋「しずく」は、早朝にひっそり営業している。 元気なとき食べるご飯は美味しいけれど、美味しいスープはこころを満たしてくれます。 仕事や人間関係、現代を社会の中で生きるつかれたひとたちが、吸い寄せられるように「…

これまでとはまったくちがう世界に行けば、まったくちがうわたしになれるはずなのです 「結婚式のメンバー/カーソン・マッカラーズ」

このろくでもない夏、彼女とジョン・ヘンリーとベレニスという「わたしたち」が存在したが、それはどう考えても願い下げたい種類の「わたしたち」だった。でもそんなことはすべて出し抜けに終わりを告げ、様相が一変してしまった。そこには兄とその花嫁がい…

なまえで 「わたしをみつけて/中脇初枝」

施設で育ち、今は准看護師として働く弥生は、問題がある医師にも異議は唱えない。なぜならやっと得た居場所を失いたくないから。その病院に新しい師長がやってきて――。 当然のように、患者とその家族主体の医療を実践する師長を、はじめはみんな冷やかします…

ひとはどうして働くのでしょうか 「昼田とハッコウ/山崎ナオコーラ」

頑張ったところで、給料は変わらないのだし、どうして熱くなる必要があるのかはわからない。社会にコミットしたいのかもしれない。 「アロワナ書店の七不思議のひとつ目」を話し終えた父が急死。 店長のハッコウといとこの昼田は、協力してアロワナ書店を存…

青春の最高潮と最終点 「少女は卒業しない/朝井リョウ」

伸ばした小指のつめはきっと、春のさきっぽにもうすぐ届く。つめたいガラス窓の向こうでは風が強く吹いていて、葉が揺れるのを見ているだけでからだが寒くなる。もう三月も終わりなのに、朝と夜は手足がつめたい。こんなにも真っ暗でつめたい世界が数時間後…

わたしはどうすればわたしになれますか 「少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹」

「雪風」 「七竈」 「雪風」 「七竈」 「雪風」 「七竈」 わたしたちはたがいの名前を呼びあった。いつのまにか背後に父はいず、薄暗い部屋には代わりに、雪風の弟妹があふれて、走ったり泣いたり笑ったりしはじめた。七歳から十一歳までの、たくさんの弟妹…

逃げ道をみつけられるひとになってください 「ちょっと今から仕事やめてくる/北川恵海」

この優しい物語をすべての働くひとたちに 勤務時間が長いから、営業が取れないから、上司の理解がないから、だから仕事はつらいのでしょうか。 わからないのです。 つらくない状態を知らないから、なにがつらいのかも、わたしたちにはわからない。 そもそも…

だれにも代りはつとまらない 「座敷童の代理人/仁科裕貴」

作家として人生崖っぷちな妖怪小説家・緒方司貴(おがたしき)が訪れたのは、妖怪と縁深い遠野の旅館「迷家壮」(まよいがそう)。座敷童がいるという噂の旅館に起死回生のネタ探しに来たはずだが、なぜか「座敷童子の代理人」として旅館に集まる妖怪たちの…

遮断されていく現実 「探偵・日暮旅人の探し物/山口幸三郎」

保育士の山川陽子(やまかわようこ)はある日、保護者の迎えが遅い園児・百代灯衣(ももしろてい)を自宅まで送り届ける。灯衣の自宅は治安の悪い繁華街にあり、日暮旅人と名乗る灯衣の父親は探し物専門の奇妙な探偵事務所を営んでいた。 澄んだ目をした旅人…

この痛みをあなたは知らない 「星やどりの声/朝井リョウ」

そのあと父は、「星やどり」の意味をわかりやすく説明してくれた。雨から身を守ることを雨やどりというだろう。ここは満天の星が落ちてこないようにする「星やどり」だ。 亡き父が遺した喫茶店とビーフシチュー。母と六人の子供たちは、それぞれ、愛する人の…

ひとの代りにはなれない。思いの代りにはなれますか 「お待ちしています 下町和菓子 栗丸堂/似鳥航一」

和菓子の味わいは心にもやさしい 浅草の一角にある和菓子兼甘味処『栗丸堂』。 死んだ両親の和菓子店を継いだ栗田は、日々腕を磨き、従業員や、地域のお得意さんとともに、なんとか切り盛りしています。 見た目はそっくりおなじに作れる、みんな、美味しいっ…