Fisher

いろんな人がいて、いろんな本を読んでいる。コーヒーと夜の散歩と伊藤計劃がだいすきな25才が、 あんな本や、こんな本を、紹介します。

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わたしはどうすればわたしになれますか 「少女七竈と七人の可愛そうな大人/桜庭一樹」

「雪風」 「七竈」 「雪風」 「七竈」 「雪風」 「七竈」 わたしたちはたがいの名前を呼びあった。いつのまにか背後に父はいず、薄暗い部屋には代わりに、雪風の弟妹があふれて、走ったり泣いたり笑ったりしはじめた。七歳から十一歳までの、たくさんの弟妹…

逃げ道をみつけられるひとになってください 「ちょっと今から仕事やめてくる/北川恵海」

この優しい物語をすべての働くひとたちに 勤務時間が長いから、営業が取れないから、上司の理解がないから、だから仕事はつらいのでしょうか。 わからないのです。 つらくない状態を知らないから、なにがつらいのかも、わたしたちにはわからない。 そもそも…

だれにも代りはつとまらない 「座敷童の代理人/仁科裕貴」

作家として人生崖っぷちな妖怪小説家・緒方司貴(おがたしき)が訪れたのは、妖怪と縁深い遠野の旅館「迷家壮」(まよいがそう)。座敷童がいるという噂の旅館に起死回生のネタ探しに来たはずだが、なぜか「座敷童子の代理人」として旅館に集まる妖怪たちの…

遮断されていく現実 「探偵・日暮旅人の探し物/山口幸三郎」

保育士の山川陽子(やまかわようこ)はある日、保護者の迎えが遅い園児・百代灯衣(ももしろてい)を自宅まで送り届ける。灯衣の自宅は治安の悪い繁華街にあり、日暮旅人と名乗る灯衣の父親は探し物専門の奇妙な探偵事務所を営んでいた。 澄んだ目をした旅人…

この痛みをあなたは知らない 「星やどりの声/朝井リョウ」

そのあと父は、「星やどり」の意味をわかりやすく説明してくれた。雨から身を守ることを雨やどりというだろう。ここは満天の星が落ちてこないようにする「星やどり」だ。 亡き父が遺した喫茶店とビーフシチュー。母と六人の子供たちは、それぞれ、愛する人の…

ひとの代りにはなれない。思いの代りにはなれますか 「お待ちしています 下町和菓子 栗丸堂/似鳥航一」

和菓子の味わいは心にもやさしい 浅草の一角にある和菓子兼甘味処『栗丸堂』。 死んだ両親の和菓子店を継いだ栗田は、日々腕を磨き、従業員や、地域のお得意さんとともに、なんとか切り盛りしています。 見た目はそっくりおなじに作れる、みんな、美味しいっ…

二時間きっかりでよみきれば 「仮面病棟/知念実希人」

療養型病院に強盗犯が籠城し、自らが撃った女の治療を要求した。事件に巻き込まれた外科医・速水秀悟は女を治療し、脱出を試みるうち、病院に隠された秘密を知る――。 ラバー製のグロテスクなピエロのマスクを被った立てこもり犯。身寄りのない患者ばかり収容…

人生はゲームじゃない 「さよなら、ベイビー/里見蘭」

高校を中退すると告げたとき、一度だけ将来はどうするつもりなのかと父に訊(たず)ねられたことがある。返事をする代わりに目の前にあったマグカップをつかんで食器棚に投げつけていた。ガラスが砕け破片が飛び散る大音量が轟(とどろ)きわたった。世界が…

実際的な暴力の顕在 「ねじまき鳥クロニクル/村上春樹」

彼女はシャワーに入って、服を着て、また日溜まりの中に座った。どう言えばいいのかわからなかったので、僕もその隣に座ったままなんとなくずっと黙っていた。太陽が移動すると、僕らもそれにあわせてちょっとずつ移動した。 家を出た妻を取り戻したい主人公…

ありがとうって伝えたら、あなたに届きますか 「出雲新聞編集局日報 かみさま新聞、増刷中。/霧友正規」

八百万の神々が集う街、出雲にある小さな新聞社――出雲新聞編集局の仕事は、神様向けの地方紙“かみさま新聞”を発行すること。新人記者の悠馬(ゆうま)は、就職早々その記事制作を任されてしまった! 人間がなにに困り、神様をいかに必要としているか、それに…

駅長には駅長の仕事があるのです 「一番線に謎が到着します 若き鉄道員・夏目壮太の日常/二宮敦人」

郊外を走る蛍川鉄道の藤乃沢駅。若き鉄道員・夏目壮太の日常は、重大な忘れ物や幽霊の噂などで目まぐるしい。半人前だが冷静沈着な壮太は、個性的な同僚たちと次々にトラブルを解決。そんなある日、大雪で車両が孤立。老人や病人も乗せた車内は冷蔵庫のよう…

わたしたちはみんな消えてしまうのかなあ 「世界から猫が消えたなら/川村元気」

「この世界から何かを消す。その代わりにあなたは一日だけ命を得る」 郵便配達員の僕はある日とつぜん、余命を宣告されます。すると同時に悪魔のアロハが現れて、取引を持ち掛けてきます。 電話が消える。僕らはもう話せない。 映画が消える。僕のエンドロー…

ほんきの京都、ほんきの料理 「鴨川食堂/柏井壽」

縁あって辿り着いた客は、もう一度食べてみたいものに出会えるという。夫の揚げていたとんかつを再現したいという女性、実母のつくってくれた肉じゃがをもう一度食べたいという青年など、人生の岐路に立つ人々が今日も鴨川食堂の扉を叩く。 店主流と娘のこい…

芸術はどこにありますか 「ネオンと絵具箱/大竹伸朗」

今まで目の前になかった「質感」を伴う世界が「外側」と「内側」で共振し始める瞬間、それら二点間にスーッと一本の頼りない蜘蛛の糸が風に揺られてフラフラユラユラと伸びていく思いがする。 その糸の「質感」に触れる気持ちは非常に微妙であやうい。そのあ…

全知ル 「know/野崎まど」

「科学が求めるものはなんだ?」 それは問題だった。 先生が僕に出した問題だった。 僕は考えた。考えた。考えた。 けれど僕は答えられなかった。 初めて会った時から僕は、先生に一度も追いつくことができなかった。 「“全知”だよ」 舞台は、超情報化社会で…

もうめまいは起きている 「推定少女/桜庭一樹」

最近の子はみんな殺人鬼。 ぼくはもう、家に帰って、話を聞いて下さいじつはこうなんです、などと説明する自信がなかった。逃げよう、とばかり思っていた。 逃げ込んだダストシュートの中で、全裸の美少女を見つけます。 「白雪」と名前をつけて、逃走仲間に…

ほんとうにひとが死んでいるということをわたしたちはしらない 「監察医の涙/上野正彦」

全ての検視に、ドラマがある。全ての死体に、真剣に耳を傾けるべきである。真剣に向き合えば、生きている人間も死んだ人間も、真実を語りだすものである。 虐待、自殺、過労死、無理心中。生涯をかけ、二万体の検視を行ってきたひとりの監察医により、ひとつ…

ゆめうつつ 「木挽町月光夜咄/吉田篤弘」

その名を吉田音吉という。おときち、である。いい名前だ。自分でもいい名前であると自惚れたのか、音吉は鮨屋の屋号に自分の名前を冠して『音鮨』と称した。いい名前である。これにはさっそくぼくもあやかりたくなって、自分の架空の娘を吉田音よしだおんと…

失いながら生きていくしかありません 「不機嫌なコルドニエ 靴職人のオーダーメイド謎解き日誌/成田名璃子」

横浜・元町の古びた靴修理店「コルドニエ・アマノ」。几帳面で偏屈ながら確かな腕をもつ店主・天野健吾のもとには、奇妙な依頼ばかりが舞い込んでくる。霊が憑いている靴を修理してほしい、ハイヒールの踵をとってフラットにしてほしい――。天野は「靴の声」…

夏休みに読みたい本 《3》

夏休みですね。 大人も子どもも、数週間、数日でも、夏休みはあるでしょうか。 あるといいですね。もしもなくても、夏はありますから、時間以外で楽しみましょう。 たくさんはしんどいかもしれないから、三冊、本を読んでみませんか? 本を読みたい人へ 本が…

わたしたちには叶えてほしいお願い事がある 「こんこんさま/中脇初枝」

この、廃屋と見まごうほどに朽ちかけた屋敷を、近所のひとたちはこんこんさまと呼ぶ。茫漠とひろがるこの庭のどこかにこんこんさまと呼ばれる神様が祀られているからだというが、現在の住人はだれもその社を見たことがなく、その社がどこにあるのかさえ知ら…

わたしたちはだれだかわからない 「残念ねーちゃんの捜索願い/佐原菜月」

残念な姉に取り憑く謎の声!? 非日常的コメディサスペンス! 声になったオッサンは、幽霊か、はたまた幻想、二重人格? 手がかりゼロの状態から、取り憑かれた姉の利津(りつ)と、弟の楽人は調査を開始します。やがてある男の死体が発見され、幽霊の正体がす…

後悔してもいいですか 「コンビニたそがれ堂/村山早紀」

駅前商店街のはずれ、赤い鳥居が並んでいるあたりに、夕暮れになるとあらわれる不思議なコンビニ「たそがれ堂」。大事な探しものがある人は、必ずここで見つけられるという。今日、その扉をくぐるのは……? 慌しく過ぎていく毎日の中で、誰もが覚えのある戸惑…

居場所を見つけませんか 「晴れた日は図書館へいこう/緑川聖司」

茅野しおりの日課は、憧れのいとこ、美弥子さんが司書をしている雲峰市立図書館へ通うこと。そこでは、日々、本にまつわるちょっと変わった事件が起きている。六十年前に貸し出された本を返しにきた少年、次々と行方不明になる本に隠された秘密……。 図書館と…

わらって話せば笑い話 「生きるコント/大宮エリ―」

うちのおとんは、かなり古風な人間で、わたしが大学に行くこと自体、反対だった。 「大学になんか行かなくていい。花嫁修業をしろ」 時代錯誤もいいところである。東大を受験すると言うと、おとんは失神しそうになりながら叫んだ。 「お前、そんなことしたら…

語らなければ、この人生は、なかったことになりますか 「ユリゴコロ/沼田まほかる」

私のように平気で人を殺す人間は、脳の仕組みがどこか普通とちがうのでしょうか。脳の中ではいろいろなホルモンが複雑に作用しあっていて、そのバランスがほんの少し変化するだけで、気分や性格がずいぶん変わるのだとか。 そちらの方面の医学的研究がこれか…

このしゅんかんのために生きてきたっておもうしゅんかん 「僕は奇跡しか起こせない/田丸久深」

十歳で突然死んだ幼なじみの真広は、養護教諭になった二十五歳の紗絵の前にいまも姿を現す。人々に幸福をもたらす「キセキ」として。世の中の奇跡のほとんどは、じつは彼ら「キセキ」たちがこっそり手助けすることによって起こっているという。 どんな姿にな…

ほかに道はないように思えたのです 「慟哭/貫井徳郎」

痛ましい幼女誘拐事件の続発。難航する捜査。その責めを負って冷徹な捜査一課長も窮地に立たされた。若手キャリアの課長をめぐる警察内の不協和音、マスコミによる私生活追及。この緊迫した状況下で、新しい展開は始まった! 作品は、事件を追う警察と、正体…

失敗したくない、だれでも、もうにどと 「化け猫島幽霊分校の卒業式/上野遊」

猫の島で僕は、『幽霊の子供達の先生』になった。 ある事件を起こしてしまい、教職を退いていた青年が、天国に旅立てない子供達の先生になるお話です。 ステレオタイプの物語ではありますが、教職時代の事件や、子供達の死因、島でゆいいつの巫女など、ひや…

まず、彼は神様です 「神様ゲーム/麻耶雄嵩」

神降市(かみふり)に勃発した連続猫殺し事件。芳雄(よしお)憧れの同級生ミチルの愛猫も殺された。町が騒然とするなか、謎の転校生・鈴木太郎(すずきたろう)が犯人を瞬時に言い当てる。鈴木は自称「神様」で、世の中のことはすべてお見通しだというのだ…

導かれたいわたしたちは 「BAR追分/伊吹有喜」

新宿ねこみち横丁、BAR追分。 昼はバールで、夜はバー。 就活に失敗し、脚本家になる夢も破れ、あとは一発逆転公務員試験に挑むしかないのか。悩んでいた宇藤は、縁あって、横丁に住み込み、振興会のPR活動の仕事をはじめます。 とくべつなお話はひとつ…

もうここは宇宙 「もののあはれ/ケン・リュウ」

大宇宙の知的種族すべてを対象にした決定的な調査は存在していない。どんな資料をもって知的と見なすのかについては議論が何度も繰り返されているだけでなく、星が生まれて死ぬのとおなじくらいいたるところ、さまざまなときに文明は興亡を繰り返している。 …

きみに幸あれ! 「タルト・タタンの夢/近藤史恵」

カウンター七席、テーブル五つ。下町の片隅にある小さなフレンチ・レストラン、ビストロ・パ・マル。シェフ三舟は、フランスの田舎のオーベルジュやレストランを転々として修行してきた変人。無精髭を生やし、髪を後ろで束ねた無口なシェフの料理は、気取ら…

村人たちも電脳巫女の夢を見ます 「キミは知らない/大崎梢」

万葉集と古事記と日本書紀と徒然草がいっしょくたになる自分を、ふだんは、まあいいじゃないかと思っている。お父さんはお父さんだ。似てなくてもしょうがない。でも、「水島さんのお父さんは、研究者としてとても素晴らしい方だったと思うよ」、そう言われ…

わたしもわたしたちも、みんな不器用です 「あずかりやさん/大山淳子」

「一日百円で、どんなものでも預かります」。東京の下町にある商店街のはじでひっそりと営業する「あずかりやさん」。店を訪れる客たちは、さまざまな事情を抱えて「あるもの」を預けようとするのだが…… 預けられる物は、自転車、タイプライターから、書類、…

純粋であることは罪ですか 「グレート・ギャツビー/スコット・フィッツジェラルド」

僕がまだ年若く、心に傷を負いやすかったころ、父親がひとつ忠告を与えてくれた。その言葉について僕は、ことあるごとに考えをめぐらせてきた。 「誰かのことを批判したくなったときには、こう考えるようにするんだよ」と父は言った。「世間のすべての人が、…

あの子たちは何者だ 「何者/朝井リョウ」

就職活動を目前に控えた拓人は、同居人・光太郎の引退ライブに足を運んだ。光太郎と別れた瑞月も来ると知っていたからーー。 就活対策をともにするうちに、本音と嘘の均衡は崩れていきます。 追い詰められ、見つめられ、うきぼりになるそれぞれの姿勢。 リク…