Fisher

いろんな人がいて、いろんな本を読んでいる。コーヒーと夜の散歩と伊藤計劃がだいすきな25才が、 あんな本や、こんな本を、紹介します。

MENU

ほかに道はないように思えたのです 「慟哭/貫井徳郎」

 

痛ましい幼女誘拐事件の続発。難航する捜査。その責めを負って冷徹な捜査一課長も窮地に立たされた。若手キャリアの課長をめぐる警察内の不協和音、マスコミによる私生活追及。この緊迫した状況下で、新しい展開は始まった!

 

作品は、事件を追う警察と、正体を明かされない男がある宗教に没入していく、ふたつのパートが交互に組まれた、二重構造となっています。

安らかな要素は皆無、絶望に染められた全編。ミステリと呼ぶには、あまりに希望がありません。

 

これは単位のお話です。

警察、宗教、家族、それらの単位のなかで、ひとびとはまぎれもなく、あがき、求め、叫んでいます。

 

彼にはわかっていた。求めても、決して救いは得られないということを。自分は今後一生、誰にも助けを求めることができない現実を。

 

わかっているのに、どうして、わたしたちは歩いてしまうのだろう。ただここに立ち止まって、死んでいくことが、なぜできないのだろう。

 

道があるというだけで、希望に思えてしまうのです。

苦境を越えたとき、そのさきにはなにがあるのか、その目で見るまでは、見えません。

ひとりの男が、組織という単位に呑みこまれていく過程が、ほかにない精度で描かれています。必見です。

ミステリと気構えず、人間ドラマとして読むと、読み進めやすいとおもいます。

 

慟哭 (創元推理文庫)

慟哭 (創元推理文庫)

 

  

あわせて読みませんか

 

怪奇、回帰、快気。物語に、逃げ込む覚悟はできていますか?

深夜の市長 (創元推理文庫)

深夜の市長 (創元推理文庫)

 
広告を非表示にする