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いろんな人がいて、いろんな本を読んでいる。コーヒーと夜の散歩と伊藤計劃がだいすきな25才が、 あんな本や、こんな本を、紹介します。

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失いながら生きていくしかありません 「不機嫌なコルドニエ 靴職人のオーダーメイド謎解き日誌/成田名璃子」

 

横浜・元町の古びた靴修理店「コルドニエ・アマノ」。几帳面で偏屈ながら確かな腕をもつ店主・天野健吾のもとには、奇妙な依頼ばかりが舞い込んでくる。霊が憑いている靴を修理してほしい、ハイヒールの踵をとってフラットにしてほしい――。天野は「靴の声」を聞きながら、それぞれの顧客が抱えた悩みをも解きほぐしていく。 

 

ブランド立ち上げまでの、ほんの数か月のつもりで、「コルドニエ・アマノ」で働き始めた京香。不愛想な店主と、バーディー人形と心を交わす従業員、三人のもとにやってくる依頼主は、みんな、大切なものを失いそうなひとばかりだった。

新品の靴が気に入らない少女、花泥棒の足跡から犯人を見つけてほしい、形見の靴に込められた謎が解けなくて……。

 

靴は履いたらすり減ります、壊れもする。人も、人がいる環境も、時間とともに変わっていきます。

 

訪れる変化は避けられない。

 

辛さをすっきり取り去る魔法はないんです。その代わり、失った分だけ、何か別のものを得ることができるかもしれない。それまで、人と違う場所から、人と違う景色を見て生きるしかないのではないでしょうか

 

わたしであることだけは、わたしの手のなかにあって、手放すか、守るかは、わたし次第だ。

 

すべての変化が祝福できるものではないように、絶望ばかりでもないのです。

五つの物語が、それぞれの時間をかけて描かれています。

最後の謎まで、きっちり、読み届けてください。

 

素直になるのは、ゆっくりでだいじょうぶ。

その人らしさを、愛する一冊です。

 

  

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風に舞いあがるビニールシート (文春文庫)

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