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いろんな人がいて、いろんな本を読んでいる。コーヒーと夜の散歩と伊藤計劃がだいすきな25才が、 あんな本や、こんな本を、紹介します。

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ほんきの京都、ほんきの料理 「鴨川食堂/柏井壽」

 

縁あって辿り着いた客は、もう一度食べてみたいものに出会えるという。夫の揚げていたとんかつを再現したいという女性、実母のつくってくれた肉じゃがをもう一度食べたいという青年など、人生の岐路に立つ人々が今日も鴨川食堂の扉を叩く。

 

店主流と娘のこいし。まほうつかいではありません、いっしょうけんめい、手で、足で、“食”を捜します。

 

「だけど、わたしの仕事では、あなたのように美味しいものばかりを出しているわけにはいかない。ときには不味(まず)いとわかっていても、出さなければいけないときがある」

「良薬口に苦し、ということですか」

「そう。だが、わたしは食べさせる側の思いばかりが先に立っていた。身体のことを考えたら、ときには不味いものも食べないといけない。我慢して食べなさい。そう言うばかりで、食べる側の気持ちになっていなかった。本当に美味しいものを食べるということが、人にとってどれほど大切なのか、それをたしかめたくて……」

 

記憶はあいまいになるのに、どうして「あの味」って、わたしたちは言うのだろう。忘れられない気がするのだろう。

 

悪意不在の物語は、京都の魅力、料理の魅力をぞんぶんに提供してくれます。

登場するひとりひとりの不器用さ、だからこその愛しさ、そこへミステリ要素もついてくる。

贅沢な一冊です。

 

鴨川食堂

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